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倉敷東ライオンズクラブは岡山県倉敷市東部地域を中心に活動する奉仕団体です。

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〒710-1101 岡山県倉敷市茶屋町601-2

買物難民             おかやま山陽高等学校 藤井 美咲 さん


「いらっしゃい、今日も寒いなぁ」
店内に響く元気な声。お年寄りの憩いの場となっている私の祖父の店には、
朝早くから多くのお年寄りが買い物に来ます。杖をついたり、椅子付の手
押し車を押しながら店内をゆっくりまわります。

 祖父は、五十年程前に地元の町に十坪ほどの小さな店を構えました。当
時は、野菜や果物、豆腐など日常生活で必要なものを売り、毎日お客さん
が沢山来て、店内も明るい声であふれていたそうです。そして、近所の方
々の声を取り入れながら、五十坪ほどの店になりましたが、お客さんの数
と年齢は変化していると言います。

 私が住む町は、昔は田園風景もある自然豊かな町でしたが、次第に住宅
地となり、二十年ほど前に少し離れた場所に大型スーパーができた影響で、
それまで買い物をしてくれていた人達も店の前を車で通り過ぎるだけで、
まるで存在を忘れられたかのように店内は閑散としてきたそうです。しか
し、しばらくすると、昔来てくれていた人達が店に顔を出してくれるよう
になったのです。
「やっぱりここがいいわ。ゆっくり見れるし、欲しいものがすぐに見つか
 るしねぇ」
その話を聞いて、私はどんなに小さな店であっても、それぞれに役割はあ
るのだと気付きました。

 近年、日本では大型ショッピングモールなどが沢山できる一方、商店街
や小さな個人商店は次々と閉店しています。車社会の現代では、買い物に
行くにも車を使用し、近くの小さな店よりも少し離れた大型スーパーを利
用する人が多くなりました。しかし、高齢のため移動手段もなく、住んで
いる地域で食料品や生活用品の購入ができず、困難を感じている人達が増
えてきました。そのような人達を「買物難民」と呼び、経済産業省の調査
によると、平成二十七年四月において、高齢者を中心に全国で約七百万人
の買物難民がいると言われるようになりました。

 今の私にとって、祖父の店の主な手伝いとは、高齢者の方々の話し相手
になることです。最近は「重たいものが持てなくなった」「思うように歩
けない」「話し相手がいなくて寂しい」など話を聞けば聞くほど多くの問
題があることを教えてくれます。
「ここで買い物できるのがたった一つの楽しみだから、ここを守ってね」
という声を聞く度に、少しでも気持ちよく買い物を楽しんでもらえること
が私の喜びになりました。そして、足や腰が痛いと言われる人には、私が
持って行ける範囲であれば、荷物を持って家まで運びます。また祖父は、
必要であれば車での送迎や電話での配達のサービスも取り入れるようにし
ました。その中で、ただ配達をする、送迎をするのではなく、顔を合わせ
て話をし、多くの方の声に耳を傾け、少しでも困っていることがあれば力
になることが祖父の大きな役割であり、大切なのだと祖父はいつも言うの
です。

 私は、祖父の店を通して人と人のつながりの大切さを実感することがで
きました。今年七十三歳になる祖父は、小さな商店だからこそ出来ること
を更に見つけてまだまだ頑張りたいと言います。どんな場所に住んでいて
も、皆が笑顔で集まれる場所を大切にしていかなければならないと思うの
です。そのためにも小さな店だけではなく、移動スーパーも活用し、人々
の憩いの場となれる場所を町全体で作らなければならないと思います。全
ての人が快適な生活を送ることができるように祖父のような高齢者が頑張
る姿を率先して見せることで、勇気づけられる人もいるはずです。そして、
私のような若い世代が積極的に問題解決のために行動できる素敵な社会を
目指せば、日本に「買物難民」と呼ばれる人も自然と減ってくると私は思
うのです。

 将来、買物難民と呼ばれる人がいなくなることを目標に、今はまず周り
の人が少しでも心豊かに生活できるように、私にできる小さな支援を続け
て、大きな喜びの社会への手助けがしたいと思っています。

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