私は毎月、貯金箱に五百円を入れます。中学生になったばかりの
四月から今まで、それを欠かしたことはありません。なぜ、毎月五
百円を貯金するのでしょう?もちろん、お金を貯めるためなのです
が、私にとってこの行動にはもう一つの理由があるのです。
そもそも、私が貯金を始めたきっかけは小学六年生の頃にありま
す。
私が六年生の時の担任の先生は、とても面白い先生でした。くだ
らないような、それでも面白い話をしては皆を笑わせ、私たちはお
腹が痛くなったり涙が出たりする程大笑いしました。休み時間には
生徒にまぎれて先生自身が遊び、楽しんでいました。私たちは、先
生がとても身近に感じられました。
また先生は、とても温かい心を持った先生でした。2011年3月11日
東日本大震災、その二ヶ月のゴールデンウィークに、先生は一日学
校を休んでまで東北へボランティアに行きました。帰ってくると、
先生は授業の時間をとり、私たちにボランティアでの話をしました。
津波に襲われた民家のボランティアをしたそうで、その民家に住む
おばあちゃんの写真をみせてもらいました。写真の中のおばあちゃ
んは笑っていたけれど、本当はとても辛い思いをしているのだと先
生は語りました。その時の先生は、今までに見たことがないくらい
深刻な顔をしていました。私はその時、改めて震災の悲惨さを知り
ました。
それから私たち六年生は、ベルマーク運動を始めました。ベルマ
ークを集めてお金にかえ、東北におくるのです。ボランティアを頑
張る先生と、ベルマーク運動を頑張る私たち生徒。クラスは一丸と
なっていました。楽しむ時はとことん楽しんで、頑張る時はとこと
ん頑張りました。そんな素晴らしい先生や仲間たちのおかげで、私
の生活は語りつくせないほどの思い出であふれかえりました。
けれど、卒業が近づくにつれて、私は毎日が過ぎていくのが悲し
くなっていきました。
「先生や皆と離れるなんて…。」
そんなある日、先生がこう言いました。
「卒業したら、毎月五百円を貯金しよう。そして皆が二十才になっ
たら、そのお金で皆 一緒に沖縄へ行こう。」
と。私たちが二十才になったらまた再会し、同窓会として旅行をし
ようと言うのです。二十才になって、本当に皆で沖縄へ行けるかは
分かりません。けれど、私は先生の言葉を信じ、皆で沖縄へ行ける
日を夢みて、晴れ晴れとした気持ちで卒業しました。
今もなお、私は貯金をし続けています。貯金をすることで毎月、
皆の事を思い出せるから。大切な仲間のことを思い出して、頑張れ
るから。それが、大きな支えになるから。私はあの日々を、決して
忘れません。
そして今月も、私は貯金箱に五百円を入れました。六年後、二十
才になって笑い合う私たち生徒や、変わらない先生の姿を思い浮か
べながら…。
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