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倉敷東ライオンズクラブは岡山県倉敷市東部地域を中心に活動する奉仕団体です。

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相手を理解すること      岡山県立倉敷天城中学校 高木 美帆 さん


 皆さんは、家族とどう接してきましたか?

 私は昔から父を毛嫌いしてきました。何か特別な理由があったわ
けでも、きっかけがあったわけでもありません。ただ小さい頃から
私は母になつくばかりで、父に対してはのけ者にするかのような態
度をとってきました。しかし父はそんな私に対して怒るわけでも注
意するわけでもなく、家ではいつも穏やかに過ごしていました。ま
た父は仕事好きな人で、普段から帰ってくるのが遅かったり、休み
の日でも仕事へ行ったりと、家を空ける事が多かったのですが、そ
れに対して私が別段嫌だと思うこともありませんでした。いつもち
ゃんと私たち家族のために働いてくれる父に感謝しながらも、その
思いをきちんと父に伝えることもなく、いつしかそれが私の中で当
たり前になっていました。

 そんな中、小学五年生になる春、私は父と離れ、母と二人きりの
生活を送ることになりました。父が仕事で単身赴任をすることにな
ったのです。私が薄情者だったのでしょうか。それでも私が父を恋
しく思うことはありませんでした。そんな生活の中、一ヶ月に一度、
私と母は車で約三時間の道のりをかけ父に会いに行きました。久し
ぶりの父との再会でしたが、特にこれといった会話もなく、もう帰
らなければならない時がやってきました。
「じゃあ、また。」
そう言って過ぎ去っていく父の後ろ姿を見つめていると、不意にこ
んな思いが湧き上がってきました。「あ、もう行っちゃうんだ…。」
寂しさ、悲しさ、恋しさのようなもどかしい気持ち。そんな風に思
う事が普通なのかもしれません。しかしそれは私にとって、今まで
父に抱いたことのない感情でした。私は今でも、あの時の感情をは
っきりと覚えています。

 それから三年程の時が経ち、父の単身赴任生活も終わりました。
私は中学生になり、父を毛嫌いすることはなくなりましたが、父に
関心を持つこともなく、ただでさえ少なかった父との会話はもうほ
とんどなくなってしまっていました。そんなある日の事です。
「今日、生放送に出るのよ。」
突然の母の発言にポカンとしながらも、私はその日父が仕事でテレ
ビの生放送に出演するのだということを知りました。「生放送なん
て、大丈夫なのかな?」普段家では少し頼りがいのない父を、私は
不安に思っていました。しかしその生放送を見て、私は衝撃を受け
ました。テレビに映る父の姿はまるで別人のようでした。流暢なし
ゃべり方やぴしっとした雰囲気、てきぱきと仕事をこなすその姿は、
私が知らなかった父の姿です。「私もこうなりたい。」素直にそう
憧れました。

 今まで父に無愛想な態度をとってきた私でしたが、そこから、父
に対する考えが変わっていきました。今まで十年以上一緒に暮らし
てきた父の事を、私はそれまできちんと理解していなかったのです。
理解していなかったから、あんな無愛想な態度をとってしまったの
です。家族だからきちんと理解している、とは言い切れないのだと
私はそこで気付きました。

 またこの事は家族だけに言えることではありません。皆さんにも
苦手な人というのがいるでしょう。あなたは無意識に、その人を遠
ざけてしまってはいませんか?けれどあなたが苦手だと感じるとこ
ろは、相手の一面にしか過ぎません。その相手には他にもっとたく
さんの長所があるのです。相手の一面だけを見て判断するのではな
く、もっと他の面に目を向け、相手を理解しようとしてみませんか?
もちろん相手の全てを理解することなどできません。けれども、人
と関わる時に大切なのは、まず相手を知ろうとする努力です。相手
を知り、理解した上でそれでも苦手だと思うならば仕方ありません。
でも最初から「この人はこうだから。」「あの人はああだから。」
と決めつけるのはやめませんか?人間には一人ひとり、たくさんの
特性があります。全く同じ人など一人もいません。今ある出会いを
大切に、「相手と向き合う」ということを忘れないで下さい。

 例えば今、あなたの隣にいる人、あなたはその人のことをどこま
で知り、どれだけ理解していますか?

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