今の自分にできること　　　　　　　岡山市立興除中学校　白井真実さん

　皆さんには将来の夢や目標がありますか。国家公務員やスポーツ選手など、様々な夢や目標に向かって日々努力を重ねている人はたくさんいるのではないでしょうか。一方で、まだ具体的な夢がない人だってたくさんいると思います。私もそのうちの一人で、まだ明確な夢はありません。

　私は小学生の頃からサッカーを習っています。サッカーを始めたのは、丁度なでしこジャパンがワールドカップで優勝した頃でした。そのため、以前に比べてなでしこジャパン対他国の親善試合が日本各地で頻繁に行われるようになりました。そんな中で小学生の頃の私は競技としてだけでなく、選手にも注目してサッカーにより興味をもつようになっていきました。そして、昨日のことのように鮮明に覚えているのは、兵庫県で行われた、なでしこジャパン対ブラジルの試合。結果は4対0で日本が快勝し、そのときのスタジアムの歓声、選手たちの笑顔は今でも目に焼きついています。

　そんなある日、私が通っていた塾から手紙が配られました。その手紙には、日本対ブラジルの試合に出場していた選手の記事が載っていました。その選手は私が通っていた塾の大阪の教室に通っていたのです。私とその選手が塾に通い始めたのは、ほとんど同じ年齢の頃で学習していた教科も同じでした。その手紙を読み進めると、こう書いてありました。
「積み重ねた努力は自分を裏切らない。将来のために今の自分に何ができるのか、逆算し、それを実行することが大事。」
この文章を見た時、私は感動し、胸が熱くなりました。何かに一生懸命になることの大切さと、その事を実現するための意欲を忘れてはならないと思いました。

　ところが、中学生になって環境が変わったためか、つい最近まで、「一生懸命になる」という気持ちを私は忘れかけていたのです。

　私は小学五年生の時から今まで、ずっと美化委員として校内の美化活動に携わってきました。そして、今期は美化委員長になり、今までよりも更に学校の中心となって学校を引っ張っていかなければならない立場になりました。私の学校では昨年度から「無言清掃」の取り組みに力を注いでいます。無言清掃とは一言も喋らず、時間いっぱい黙々と掃除をし、自分自身の心も磨こうという取り組みです。昨年度の私は「美化委員」としての自分に誇りをもち、クラスで呼びかけをしていました。最初はクラスの大半がふざけていて、一生懸命掃除をしている自分が恥ずかしいほどでした。しまいには、「喋らずに掃除してよ。」と言うとどこかへ行ってしまい、陰で「何であんなに頑張るんだろう。変な人だね。」などと言われることもありました。それでもめげずに無言清掃を呼びかけ、せめて自分だけでもという思いで清掃し続けていると、それを見た友達が私と同じくらい、一生懸命掃除をしてくれるようになったのです。気付けば徐々に掃除時間が静かになっていきました。

　しかし、二年生になってクラス替えがあり、学級の雰囲気が以前とは変わってしまったのです。呼びかけをしても一向に良くならず、私に協力してくれていたような友達もおらず、「こんなに言ってもダメなら無理だ」と呼びかければ呼びかけるほど、虚しい気持ちを味わうことが増えていったのです。自分も周囲に合わせて喋ってしまったり、綺麗になっていなくても見て見ぬふりをしてしまったりして、どこか無言清掃を徹底することを諦めてしまっている自分がいました。

　けれど、美化委員長になった今、これまでのように、諦めたり、言い訳をしたりすることが許されなくなったのです。クラスだけでなく学校を引っ張っていかなければならない立場になり、責任感と不安で自分が押し潰されそうになることもあります。でも、これを乗り越え、全校で無言清掃を徹底して行うことができた時、大変だった事以上の達成感を味わうことができ、それと同時に私自身も成長することができると信じています。

　そうして考えると、日常生活の全てが自分自身を成長させてくれるものであり、この日常生活の出来事、一つ一つをどれだけ有意義に過ごすことができるかということが、とても重要だということに気が付きます。それは勉強や部活動、委員会活動、習い事の全てを通して言えることで、たった一つのことでも目的意識をもって行動することで、これらの積み重ねが将来の夢や目標に結びつくと思います。今、こうして皆さんの前で発表させて頂いているこの瞬間にも自分は成長しているのだということを実感し、感謝の気持ちを忘れず、友達や先生方との関りを大切にしていきたいと思います。これからも自分を成長させ、人間性を高めていけるように一日一日を大事にしていきます。それが今の自分にできることだと思うから。

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