弟からもらった大きな夢 倉敷市立東陽中学校 岡 なつみ さん
私の夢は保育士になること。この夢を見つけることができたのは、七歳年下の弟が生まれてきてくれたおかげだと私は思っています。
「私も下の子がほしいなあ。」
ずうっとそう思っていました。友だちが兄弟の話をしているとき、近所のお姉さんが、妹を抱いて歩いているのを見るとき。
「私にも弟か妹ができないかな。そうしたら、うーんとかわいがってあげるのに。」
そんな私にも小学校一年生の時、弟ができました。母の妊娠が分かったクリスマス。私はサンタさんに宛てた手紙に「元気な赤ちゃんがほしい」と書きました。
心待ちにしていた弟が誕生したのは3月31日。大きくて元気な産声でした。
「これからはいつも一緒。」
毎日仲良く遊べる日が始まると、とても嬉しかったのを覚えています。ところが、その期待は大きく裏切られました。久しぶりに会う親戚の関心を集めるのは弟ばかり。今までなら私と遊んでくれていた人たちも、弟ばかり可愛がって私にはかまってくれなくなりました。それどころか母まで。小さな弟の世話をする母。いつも私のものだったはずの母の隣。その席まで、全て弟に取られてしまったのです。毎日続く夜泣き。そのストレスが私にあたることも多々ありました。
「弟なんていなければ良かった……」
私の心の中にはそんな思いが生まれかけていました。
弟が保育園に行き始めました。母と一緒にお迎えに行くと、小さな子たちがいっぱい私に飛びついてきます。私はその子たちと鬼ごっこをして遊びます。小さい子たちと過ごすのは楽しい。保育士さんになりたいという夢が生まれ始めたのはこの頃からです。私に懐き甘えてくる子たち。それに比べて弟ときたら、私のことなど無視して母にまっしぐら。
「やっぱり弟ってかわいくない……」
そんな気持ちが変わったのは、母から聞いた話でした。
「ゆうきはお姉ちゃんが大好きなんだって。」
「いつも遊んでくれて優しいから大好きだって、よく言ってるよ。」
弟に母を取られたと憎んでいた私。それなのに、弟は私を大好きと言ってくれる。弟のことを悪く思っていたことが、バカらしく思えました。そして、弟が生まれた時の嬉しさを思い出し、私も弟が大好き、弟は大切な存在だと改めて思いました。
他の子より少し発達が遅いけれど、明るくて優しく、笑顔でみんなを明るい気持ちにさせてくれる弟。その弟が、保育園でからかわれていると聞いたときには、随分心配しました。
思い返してみれば、私が保育園に通っているときにも、弟のような子がいて、弟と同じような目にあっていました。私もその子のことが苦手で、避けたことがあります。弟の友だちと同じことを私もしていた。その子にも、その子を大切にし、その子を心配していた家族がいたはずなのに……。そう思うと胸が苦しくなりました。
人よりできる子もできない子も、みんな仲良く生活できる。からかいやいじめの心を持たないように子どもたちを育てていく。そんなことができる保育士になりたい。弟を通して、私の夢はもう一歩大きくなりました。いじめが原因の哀しいニュースが、あとを絶たないこの世の中。それを、少なくできる保育士になりたい。
この春、弟は小学校に入学しました。弟の成長を姉として見守りつつ、私もまた弟を通して考えていこう。一緒にこれからも成長していきたい。弟からもらった大きな夢を叶えたい。そう、考えています。
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