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倉敷東ライオンズクラブは岡山県倉敷市東部地域を中心に活動する奉仕団体です。

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幸せの切符           おかやま山陽高等学校 栗子 紗和乃 さん


 朝四時の町の通りは、暗闇と静けさに包まれています。その静けさの中
をアルバイト先に向かって、スピードを出して自転車で駆け抜ける生活を
始めて三年目になります。

 母子家庭で育った私は、幼い頃から自分の事は自分でするのが当たり前
でした。父のいない我が家では、母が身体の弱い祖母と子ども三人を養う
ために、寝る間を惜しんで朝から晩まで一人で働いています。そんな母に、
ものづくりが好きな私は三年前、
「自分で学費を稼ぐから、私立高校の機械科に進学したい。」
と無理を言って、機械科の中でたった一人の女子生徒として入学したので
す。そして、約束通り、私はアルバイトのお金で学費や通学の定期代、ま
た、自分の携帯電話代や大学入学資金など、必用経費を自分で賄う生活を
しています。しかし、必要に迫られた支払いをすると手元に残るお金はわ
ずかで、大学資金まで手がまわらないのではないかと思えてきました。

 そんな生活を悩んだこの春、大学進学も教師になる夢も諦めようかと、
母に打ち明けました。すると母は、シングルマザーとなった十五年前の話
をしてくれました。専業主婦だった母が仕事を得るために介護の資格を取
り、死ぬ気で家族を支えたこと、例え社会的に弱い立場で不当な扱いを受
けても、腐ることなく自分を磨きあげるために、さらなるスキルアップを
目指して資格取得を続けたことで、分かったことが沢山あるというのです。
それは、辛いことから逃げ出したくなっても、それを乗り越えるために努
力することで、社会で必要な耐え抜く力を身に付けることができ、応援し
支えてくれる人が必ず現れたというのです。

 私は母の言葉を聞くまでは、何でも一人で生き抜かなければならないと
いう思い込みがあったように思いました。考えてみると、学校では、厳し
くも優しい機械科の先生方に見守られて、ものづくりに必要な技や精神力
を鍛えることが出来ています。また、機械科の仲間は、私が弁論大会に出
場する度に、機械科全員で撮影した「頑張れ」という応援メッセージ付き
の写真を送ってくれます。そんなことを想い出しながら、私は自分を成長
させたいと思ったのです。

 昨年、日本の未来を切り開く新たな国づくりとして、「一億総活躍社会」
を目指すという発表がありました。それは、男性でも女性でも人間として
平等であり、それぞれの立場で活躍し、能力を発揮し、希望を叶えて生き
がいを感じることのできる社会を目指すことだと言われます。それぞれの
希望する場所で持ち味を発揮することのできる社会になれば、私にも新た
な道が開かれる可能性があるのだと思えてきました。

 そんな時、先生から「幸せの切符」の話を教えていただきました。男性
でも女性でも、若くても老いていても、全ての人は幸せになる権利がある
こと。そして、自分の持ち味を理解し、なりたい自分を描き続けていくと
「幸せの切符」を手に入れることが出来ると言うのです。その時、幸せの
概念は、自分で決めるものであり、自分の信じる道で花を咲かせることだ
と気が付いたのです。

 自分が今出来ることを精一杯することが幸せにつながるのではないかと
考えた私は、多くの事に挑戦しています。ものづくり大会旋盤部門では、
岡山県代表として中国大会に進み、三位になりました。また、弁論大会を
始め、論文コンテストや討論会にも参加し、自分の気持ちを精一杯発表し、
国際ソロプチミストの方々から支援を頂くこともできました。夢に向かっ
て歩き始めた時、暗闇の中でもがいていた私に、太陽の光が差し始めたこ
とを感じています。

 これからも私は、アルバイトを頑張りながら大学に進学し、私のような
ものづくりが好きな生徒のために、機械科の教師になりたいと思います。
そして、自分だけではなく生徒も輝かせて、幸せの切符を多くの人に渡せ
るような人間になりたいと思っています。

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