霧が晴れたら　　　　　　　　　岡山県立倉敷天城中学校　國府優花さん

　私が小学校で遠足に行った時のことです。私の小学校ではお弁当と一緒にお菓子を持って行っていいことになっていました。ただし、行き帰りのバスでは食べないというルールがありました。その日の帰りのバスでのこと。私の友達二人がお菓子を食べていました。普段は真面目な二人の行動に、私はすごく驚きました。でも仲のいい友達だったし、注意する勇気もなく、見て見ぬふりをしていました。ですが、学校に着いてバスを降りた時、一人の男の子がこう言ったのです。
「先生、バスの中でお菓子を食べていた人がいる。」
普段は注意を受けることが多かったその男の子がこんな発言をするなんて、意外でした。少しして二人の友達と男の子が先生に呼ばれました。私は近くにいたので、会話の様子が聞こえてきました。
「バスでお菓子を食べていたのですか。」
「いや、違います。多分、そう勘違いされたのは歯が痛かったので、触っていたからです。あと、お菓子はカバンから出していたけど、それはカバンの中を整理していたからです。」
嘘です。しかしその直後、先生は強い口調で、男の子に向かってこう言いました。
「あなたは、この二人がお菓子を口に入れるところを見ていないのに、決めつけてはいけません。」
その男の子の顔は、曇りました。悪くない男の子が怒られるなんておかしい。
「私は、その二人がバスでお菓子を食べているところを見ました。」
とっさに、私はそう言っていました。その後、その男の子への誤解は解けましたが、どちらが事実か確かめる前に、先生がその男の子を叱ったのはどうしてなんだろう。と、私は考えていました。先入観ではないか、そう思いました。いつも真面目な女の子といつもは注意を受けることが多かった男の子。対照的な二人だったから、いつも真面目な女の子が正しいと思えたのかもしれません。

　でも、自分に置き換えて考えてみたら、「先入観」を持ってしまっていることはたくさんありました。友達から聞いた噂話を真に受けて、自分で確かめたわけでもないのに悪い印象を持ったことがあります。人と関わるときに、相手に悪いイメージを持ちながら接することは、決して感じの良いものではありません。だから今は、噂話を聞いた時には、もしかしたらこの話は間違っているかもしれない。そう思うようにしています。でも、まだ時々、信じてしまいそうになります。「先入観を持たない」ということは、思っていたよりずっと難しい事です。

　皆さんには、「先入観を持ってしまった」ということはありませんか。逆に、人に噂話を伝えて、先入観を持たせてしまったことはありませんか。「先入観」は人間関係を悪くし、そして狭くしてしまうと思います。先入観をもって人を見ると、霧がかかったように、人のことをぼんやりとしか見ることができなくなると思います。その人の本当の姿が見えなくなってしまうと思います。だから私は、先入観を持たずに人と接し、その人の良いところや意外な一面を見つけられる人になりたいです。そして、広い人間関係を築いていきたいと、強く思います。

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